「NICOLAI BERGMANN HAKONE GARDENS」について
今年4月箱根にオープンした、「NICOLAI BERGMANN HAKONE GARDENS」についての感想。
森の中にフラワーインスタレーション。
箱根の自然とアーティストの感性のコラボと言いましょうか。
完全オープンではなく一部工事中のところもあり、だいたい30分〜40分もあれば一周できる感じです。
5月の初め時点では鈴廣の蒲鉾ピンチョスと箱根ビールのイベントが。
風が木の葉を揺らす音や鳥の声を聞きながら、緑に囲まれて飲むビールは開放的で実によいものです。
ガーデン内には鉢植えのお花やフラワーインスタレーションがあちこちに。
紫陽花が美しい…。
文句なしに森林浴。
自然そのままなので虫嫌いの方は覚悟して行くか季節を選んだほうがよいかと。
ちなみにポーラ美術館からは歩いて25分ほどで一本道の坂を下っていけば到着、バスもありますが余裕があれば両側に木が茂る道を歩くのもまた一興です。
箱根の自然を感じつつアートにも触れ合えるという、ポーラ美術館の遊歩道とも通じるものがある不思議空間でした。
「ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ」について
箱根のポーラ美術館にて開催中の、「ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ」についての感想。
まずポーラ美術館は立地が良い、森の静けさに鳥の声。
静かな気分で美術館に入れば素敵な作品が続々と…ゆったりした時間が流れます。
今回はジャンルが色々で刺激的、気になった作品をいくつか。
■ベルト・モリゾ 《ベランダにて》
柔らかい光の中のかわいらしい少女。
画家の気持ちが絵に滲み出ているのでしょうか、見ていてほっこりした気分に。
■松本竣介 《街》
街がもやもやと描かれており、なんだかモヤモヤと心惹かれてじっと眺めてしまいます。
■ヴィルヘルム・ハマスホイ
《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》
静寂を感じるのはこの画家の常ですが、外の光の感じや女性の服から、温度や匂いも感じられそうな気がしてきます。
■ゲルハルト・リヒター 《抽象絵画(649-2)》
■クロード・モネ 《睡蓮の池》
2つの絵は並べて展示されていたのでまとめて。
リヒターの絵は人によって見えるものが変わってきそう、どこか金属的な色合い。
モネの睡蓮は何度見ても飽きない良さがあります。
モネの絵を見てからリヒターの絵を見たところ、頭の中で勝手に風景画として解釈しようする自分に気づいて少々面白い。
ポーラ美術館は中だけではありません、外の素敵な遊歩道も忘れずに。
■スーザン・フィリップス 《ウィンド・ウッド》
遊歩道を歩いていたらどこからかフルートの音が、と思ったら作品でした。
日の光に照らされた青々とした木々、鳥の囀り…それにフルートも重なって、アーサー王の物語の世界に紛れ込んだような気分になります。
こちらもかわいかったのでついでに。
美術鑑賞だけでなく森林浴もできるという、楽しみ方色々な展覧会でした。
「シダネルとマルタン展」について
新宿のSOMPO美術館で開催中の、「シダネルとマルタン展」についての感想。
会場に入った瞬間、パッと春の光の輝きが…!と思ったら、マルタンの《野原を行く少女》でした。
1枚目から目が釘付け。
アンリ・ル・シダネルとアンリ・マルタン、奇しくも同じ名前の2人の画家の響宴。
どちらの絵も素晴らしいのですが、今回額縁にも目が留まりました。
特にシダネルの《モントルイユ=ベレー、朝》の銀色のわりとシンプルともいえる額縁は、絵と良く調和しており、額縁があるからこそ絵が引き立つように感じます。
また、同じくシダネルの《モントルイユ=ベレー、紫陽花》の額縁は花が立体的に浮き彫りされていてかわいらしい。
気になった作品をいくつか。
■マルタン《青い服を着た少女》
鮮やかな青い服が背景の明るい緑と相まって美しい。
ただ、少女の目の部分がぼやかすように描かれているのが少々怖い…。
《オデット》も同じような描き方、笑みを浮かべているので個人的にはより一層ホラーっぽいなあと思うのでした。
■シダネル《ジェルブロワ、離れ屋の前の小卓》
暖かな気持ちになる一枚。
薔薇に覆われた家の窓からオレンジ色の明かりが、かわいさと素敵さがいいバランスです。
■シダネル《ヴェルサイユ、月夜》
噴水は控えめに、メインは月が輝く夜空ですが、この月と雲の感じはなんか見たことある…。
フランスでも日本でも、そして時代も違えど同じような夜空が見られるのかと不思議な気持ちになりました。
■マルタン《窓際のテラス》
大きく開けられた窓から見えるのはおそらく空と海。
窓の外の広々とした空間が想像でき、伸びやかな気分になります。
絵の中に描かれている椅子に座って、一日ぼんやり風景眺めていたいものです。
どちらを見ても素敵な絵ばかりでほっこりする展覧会でした。
「スコットランド国立美術館 美の巨匠たち」について
東京都美術館で開催中の、「スコットランド国立美術館 美の巨匠たち」についての感想。
ルネサンスから19世紀までの、有名どころが勢揃いで見ていて飽きない展覧会。
時代も題材も違いますが、全体的に落ち着いた色彩で統一された展覧会のように感じました。
気になった作品をいくつか。
■エル・グレコ《祝福するキリスト(「世界の救い主」)》
素朴なようでどこか超越したようなキリストの表情。
くすんだ色彩と相まって、いつまでも見ていられる作品です。
■ディエゴ・ベラスケス《卵を料理する老婆》
10代の時に描いたものとか。
題材選びも絵そのものも、そんな若いときに描いたとはとても思われず、才能に戦慄する思い。
■ジョン・マーティン《マクベス》
空中でシンクロナイズドスイミングみたいなポーズをとった3人の魔女、少し離れたところにいるマクベスとバンクォー。
こんな会話が聞こえてくるようでした。
「マクベス、そろってあんな変なポーズしてるなんて絶対頭おかしい、近づかないほうがいいって!」
「臆したかバンクォー、あんなもの恐れるに足りん!」
結果は推して知るべし。
■ジョン・エヴァレット・ミレイ《「古来比類なき甘美な瞳」》
この画家の描く女性は物語性があり美しく魅力的だなあと思います。
左斜め上を向いた少女は何を見ているのか…。
綾瀬はるかさんに少し似ているような、他の方も同じ感想を抱かれたようで話されているのが聞こえてきて面白い。
スコットランド国立美術館の写真を見たら堂々たる建物。
いつかこの美術館の真っ赤な壁の部屋で再び同じ絵を眺めてみたいものです。
映画「見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界」について
映画「見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界」についての感想。
ヒルマ・アフ・クリントという画家は初めて知りましたが、なんでもカンディンスキーより先に抽象画を描いていた女性画家とか。
映画は、遺族や美術史家などの話から画家の生涯や作品を辿るもの。
絵がたくさん紹介され、美術館に行ったような気分。
明るく優しい色彩と柔らかな線。
海軍士官の父親から数学などを学んでいたとのことなので、理系的な発想もあったのかなという気がします。
細胞などを連想する絵もあり、肉眼では見えない世界というか、何か不思議な扉が開きそうな絵の数々。
実際に絵の前に立ってみるとまた雰囲気違うのかもしれませんが…いつか日本にも来てほしいものです。
先端を行く女性はその時代では理解されないのがなんとも残念ですが、絵が残ったのはせめてもの幸いでした。
映画中、風景やカタツムリなど自然界の映像が挿入されていますが、クリアでとても綺麗。
美術史が今後どうなるかはともかく、大変目の保養になる映画でした。
「上野リチ ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展」について
東京の三菱一号館で開催中の、「上野リチ ウィーンからきたデザイン・ファンタジー展」についての感想。
最初から最後まで、とにかくかわいい、としか言いようがありません。
草花や野菜を抽象化したデザインに落とし込むのが本当にうまいというか、色の組み合わせ方もなんとも心惹かれるものがあります。
同じデザインなのに色を変えるだけでガラッと別物のように印象が変わるのも面白いところです。
テキスタイルや壁紙のデザインが多かったですが、鳥のデザインを見ていたら、少し時代の重なっているフィンランドのルート・ブリュックを思い出しました。
気になった作品をいくつか。
■《ウィーン工房の封筒》
上野リチが勤めていた工房のもの、作者不詳のようですがロゴがかっこいい。ここに頼んだらセンス良いものを作ってくれるだろうと期待ができます。
■《スキー用手袋刺繍デザイン》
スキーだけに使うのはもったいない華やかさ。これを着けられるなら寒さも待ち遠しいものになりそうです。
■《七宝飾箱デザイン》(複数あり)
馬のサーカス、草叢の虫、結婚式など、デザイン画と実際の飾箱どちらもありましたが、見比べていると飽きません。
ただ、真っ黒で丸い人の目は絵だとかわいいのですが、飾箱にするとちょっと虚無っぽい感じで少々ホラー入ってる気も。
■《マッチ箱カバー・デザイン》(複数あり)
どれみてもかわいらしい。とくに建物をデザインしたものは色合いといい、マッチを使い切っても箱は飾っておきたい感じです。
これほど素敵なデザインを生み出せる人の目には世界がどう映っていたのだろうか、と少々気になった展覧会でした。